世に生を受けて十五余年、高校への進学で生まれて初めて、自分の意思で学びの選択をするという皆さんがほとんどのことと思います。そんな意味からすると、高校入学は本当の自分を作り上げるためのスタートラインであり、高校生活の一歩一歩、一日一日が、未来につながる自分の道につながっているといえます。
道内屈指の歴史を持つ本校の開校は、1922年。札幌市が誕生した同年に、「静修会女学校」は生まれました。当時の日本は、大正デモクラシーが進行し、西洋文化の影響が強まった時代。それでも大正時代の義務教育後の進学率は、わずか15%程度にとどまり、子どもたちは小学校を卒業後、必ずしも中学校に進学するわけではありませんでした。そんな時代に、高い志を持つ女性の力によって、この学園は創設されました。本校ならではの教育理念である「ココロスイッチ」─先達の女性たちは、まさに心にスイッチを入れ、艱難辛苦を乗り越えて、創成期を築き上げたことは、想像に難くありません。容易に実現できない素晴らしい偉業を成し遂げたのです。
これまでに3万人以上の卒業生を輩出し、長きにわたり伝統を受け継いできた本校は今、時代の変化に機敏に対応しながら、次の100年に向けた挑戦を続けています。生徒と教員が心のスイッチをオンにして、未来を開拓していく姿は、本校の大きな強みになっていると感じています。
変化のない時代はありません。それゆえに、変化を追い風にする柔軟な対応力が、明日を切り拓く力になります。卒業後に社会の第一線で活躍する人を増やすことも、本校がめざす目標の一つです。しかしながら、教育の成果はすぐに開花することもあれば、遠い未来に花開くこともあります。願わくば、多様化する社会の中で、他人と比べることなく自分だけの花を咲かせてほしいと思います。
少子高齢化が全国的に加速する中で、私立高校の果たす役割も変わりつつあると考えています。本校は、校舎の全面改築を契機に、「地域に開かれた学校」をめざしています。多様な人々との交流が生まれる環境を創造し、これまでにない都市型学園を作ろうと取り組んでいるところです。
私たちの社会は、思いも付かない多様な社会構造の中で営まれています。視野を広げ、真に社会貢献できる人材を育成するため、この先もあらゆる生徒に多様な学びのチャンスを提供していきます。
ここで私の人生を変えたエピソードを一つ紹介します。私が大学3年生の夏の出来事でした。
京都で400年続く老舗主人の講演会を聞く機会がありました。正直、内容も良く理解していませんでしたが、講演が終わり、新興菓子店の主人が謝辞を述べたときでした。「さすが、長い歴史を重ね、変わらぬ味を守り続けてこられた・・・」と話が進んだとき、その老舗主人が大きな声で、「わたしの店が変わらぬ味なんて誰が言った」と一喝、「私の店の味は、たゆまぬ研鑽で大いに変化してきた。その時代その時代の食生活に応じた商品作りをしてきた。変化しなければ成長もない。400年前と同じものなんか、誰が買うものか・・・」と続けられました。その迫力に、ウトウトしていた私は目が覚めました。
そうなのです、伝統を守るということは、挑戦なのです。常に時代に対応した変化をすることで守られるのです。静修学園の次の100年を担う皆さん、高校生活も卒業後も、GLOBALな社会で変化を恐れず、いつもココロのスイッチをONにして、自分の力で前に進んでください。
校長
静もって身を修め、倹もって徳を養う
「静以修身倹以養徳」
という校名の由来に深く想いをいたし、
伝統に培われた精神的風土を生かして
豊かな知性を磨き
優雅な徳性をそなえ
すこやかな身体を養い
もって未来を担う個性豊かな人間を育成する。